野村茎一作曲工房 音楽コラム2

モダンクラシックの作曲家 野村茎一が音楽雑感を綴ります

きまぐれ雑記帳 2013-11-04 「一人でもプロジェクト・マネジメント」のすすめ

 ピアノが弾けるようになりたい、100万円貯めたい、だらけた生活を立て直したい・・。

 こういうことを思い立つことが人生の醍醐味。自分の人生にとってプラスになることなら、目的はなんでもよろしい。

 そんな時に、驚くほど力になるのがプロジェクト・マネジメントという考え方である。

 ここで言う「プロジェクト」の本来の使い方は一人でやることではなく、複数の人間が関わる有期計画を指すが、ここでは、そのバリエーションとしての「一人でのプロジェクト」について提案したい。

 

 最初に必要なのは「明確な目標」と「期限」。

 目標が明確でなければ、途中で道を逸れてしまう可能性があり、また「最も乏しい資源である時間」(ドラッカー)を有効に使うためには期限の設定が欠かせない。

 ただし、ピアノが弾けるようになりたいというような漠然とした目標の場合は、期限の設定は難しくなってしまうので「ピアノの練習を習慣として行なえる自分に変わる」というような目標に設定すれば、有意な「期限」を設定できることだろう。

 ともあれ、最初は短い期限設定からスタートすることをお薦めしたい。

 「1億円貯める」という目標は、平均的な生涯賃金から考えれば不可能ではないものの、長期間にわたる挑戦となるので、実現するには20年、30年後にも同じ志を持っている自分がいなければならないことになる。

 まずは10万円、あるいは100万円というところに目標を設定すれば実現可能性は高まる。

 

 ドラッカーは「もっとも乏しい資源は時間である」と前述したけれど、ここでは詳細を書く余裕がないので、次のような間違った例を挙げておくに留めたい。

 「時間節約のために音楽を倍速再生で聴く」

 

 そして成功の鍵となるのが「習慣化」である。「ピアノ演奏が上達し続ける自分」を目標にする場合には、これ自体が目標に近いものになる。いかなる方法も、実行の習慣化には勝てない。そして「習慣化」は「快楽原則」と「身体の反射」が関係してくる。「仕事に慣れる」という言い方があるけれど、少なからぬ場合、そこには身体的な反射が関係している。

 仮に目標金額を10万円と決めて、無理なく貯金できそうな金額として毎日平均500円ずつ貯金することにしたとする。期限は200日後。毎月17000円貯金しても6ヶ月後には102000円貯まるので同じようなものだと思うかも知れないけれど、それではプロジェクト・マネジメントの凄さを体験することができない。

 長くなりそうなので、他の要素についての説明はカットして、ここから本題に入る。興味を持たれた方なら、きっとご自分で勉強なさることだろうから。

 手書きでもエクセルのような表計算ソフトでも構わないので、次のような表を作って冷蔵庫など、毎日、目にする場所に貼り付ける(時系列順タテ型・ヨコ型は好みで)。

 これは200日の目標達成度確認表であり、項目は次のとおり。

  第n日 ◯月◎日△曜日(n1から始まる整数で0<n<201、つまり1200)。

  予定金額 500n

  その日の入金金額(空欄)

  その日までの合計金額(空欄)

  予定達成度 0.05n

  実際の達成度 その日までの貯金金額÷100,000(空欄:500円ずつ貯金しつづけているなら予定達成度をそのまま写すだけでよい)

  さらに凝りたい人は目標達成までの残り日数n200から始まる整数で201>n0、つまり2001)という項目を付け加えてもよい。

 

 これで準備完了。

 この表に書き込むことで成果を直接確認できることは非常に重要。体重を測って記録し続けるだけでダイエットになる、というのとよく似ている。

 

 第1日目、あなたは財布のなかから500円を入れて確認表に「500」「500」そして予定達成度欄には、目標を達成したので、予定達成度の数字をそのまま書き込む。

 第2日目、あなたは、いつも日替わりで買う嗜好品(おやつなど)を節約して貯金の足しにすることを思いつき実行。達成感あり。

 第5日目、あなたは、なぜ貯金などのために毎日の楽しみ(嗜好品)を諦めなければならないのか不満に思うようになるかも知れない。そのため、貯金しても達成感は減じてきた(あくまでも設定による推定)。

 第6日目、とあるショッピングセンターが全商品を通常価格の5%、あるいは10%ディスカウントで販売する日があることを知った。ここを利用すると、必要なものを手に入れて、なおかつ節約できることになり、意欲が回復。

 第11日目、今まで知ってはいたけれど、やったことのなかったネット上の「アンケートに回答してポイント取得」を実行。これで嗜好品が復活し、またまた達成感復活。

 以下省略するけれど、適切に設定されたプロジェクト・マネジメントは、上記の例のように実行者の生活スキルをアップさせる力がある。

 200日後のあなたは、目標の10万円と実行する意欲と力を手に入れている可能性が高い。

 

 「ピアノが弾けるようになりたい」というプロジェクトも同様。最初から「月光ソナタ」を目指すという方法も無くはないものの、オーソドックスにピアノメソードに沿って初歩から学んでいっても、月光ソナタを弾けるようになるまでの期間は大差ないかも知れない。しかも「月光ソナタ」だけを狙って練習した場合には、その曲を弾くための一部のテクニックだけが身につく可能性があり、メソードに沿って練習した場合には、まんべんなく学べる可能性が高くなる。

 毎日の成果が分かると、毎日小さな達成感を得ることができる。達成感は快感であり、それが習慣を生む。習慣化こそがプロジェクトの成功の鍵であることはドラッカーの言葉のとおり。

 

 老婆心ながら書き添えておくと、皆さんの中にはとても物分かりが良くて、この短文を読んだだけでプロジェクト・マネジメントのことやドラッカーのことが分かったような気分になった方もいらっしゃるかも知れない。

 本来のプロジェクト・マネジメントは、複数の人が関わるからこそ必要なものである。その最も重要な部分が全て抜け落ちているので、くれぐれも誤解なさらぬように。

 私がここに書いたことは、海について知りたい人に浜辺の砂の一粒について説明したのも同然と言えるほど限られた内容に過ぎない。興味を持たれたならば、これをきっかけと思って、さらなる探求を行なってくださるよう願って結びとしたい。

 

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